ERA検査を行う意義について
「ERA検査は意味がないとは本当なのか?」
「ERA検査を受けるかどうかの判断基準について詳しく知りたい。」
など、疑問に思うことがたくさんあると思います。
ERA検査を受けることに意味がないかどうかは、ERA検査の権威性・研究成果・実績などの詳細を理解することで判断できます。今回は、ERA検査は意味がないとは本当なのか、またERA検査を受けるかどうかの判断基準について、以下の項目を中心に解説します。
・ERA検査を行う意義について
・ERA検査はどのように行われるのか
・ERA検査は意味がないとは本当なのか
・どんな人がERA検査を受けるべきなのか
・ERA検査を受けることで妊娠率は上がるのか
ERA検査を行う意義や検査手法について正しくご理解いただき、ERA検査は本当に受ける意味がないのか、ご自身に必要な検査かどうかを改めて考え、今後の治療のご参考にしていただければ幸いです。
また、ERA検査を受けるべき人や妊娠率の向上についても触れているので、ぜひ最後までお読みください。
ERA検査では何が分かるのか
ERA検査(Endometrial Receptivity Analysis)は、日本語で「子宮内膜着床能検査」といいます。
ERA検査は、胚を受け入れるための子宮内膜の準備が整うタイミングである「着床の窓」を調べるための検査です。
なぜ着床の窓を特定する必要があるのか?それは、状態の良い胚を用いて胚移植を行った場合でも、胚移植のタイミングが12時間ほど着床の窓とずれてしまっただけで、胚が着床できないことがある、ということが研究により分かっているからです。
※胚移植とは、卵子と精子を体外で受精させ得られた受精卵を培養し、分割が進み胚へと成長したタイミングで再度子宮に戻すことを指します。
この12時間単位の着床の窓のずれを特定できるのは、世界中でERA検査(特許取得済み)だけとされています。
その他にも、25の国際的な研究論文に裏付けられている・3,500施設以上の導入実績・10万組以上の利用実績など、その権威性や検証結果が認められているのも、ERA検査だけです。
ごくわずかな子宮内膜組織を採取し遺伝子検査を行うことで、受精卵を移植するのに最適なタイミングを知ることができます。
ERA検査は意味がないとは本当なのか
「ERA検査は意味がない」といった言い方をされる方も一部いらっしゃいます。
ですがERA検査は研究論文や施設の導入実績と利用実績から、多くの研究データを蓄積しその意義を高めてきました。
そのため、ERA検査は意味がないということは事実ではなく、胚移植がなかなか成功しない患者様(反復着床不全)や、流産が続いている患者様(反復流産)を対象に実施した場合には、効果があるケースが非常に多いといえます。
初めて体外受精を行う患者様であっても、着床の窓のズレが見つかる場合はあります。
そのため、採卵個数が少なかった、良い受精卵が育たなかった、もしくは少しでも早く妊娠できるように最初からあらゆる検査を検討したいという理由から、初めての体外受精でERA検査の利用を検討される方もいらっしゃいます。
ただし、その場合は検査費用や患者様のご年齢、他に想定される不妊の原因等を踏まえ、検査・治療の優先順位について医師とよくご相談いただく必要があります。
どんな人がERA検査を受けるべきなのか
ERA検査は原因不明の不妊に悩んでいる女性を対象とした検査です。
また、最先端の遺伝子検査技術を用いた検査であるため、ERA検査の費用は比較的高額です。
そのため、せっかくERA検査を受けても意味がないのでは、と不安になる方は多くいらっしゃいます。
少しでもその疑問や不安を解消するために、ここからはERA検査の対象となる患者様について、詳しく見ていきます。
ERA検査の対象者
着床の窓を調べるERA検査の対象となる患者様は以下の通りあげられます。
・生化学的妊娠(化学流産)を2回以上ご経験された方
・PGT-A検査で正倍数性胚盤胞が得られた方
・子宮内腔に問題が見つからないにも関わらず、胚移植が成功しない方
一つずつ項目を解説いたします。
生化学的妊娠(化学流産)を2回以上ご経験された方
生化学的妊娠とは、血液検査や尿検査で妊娠を示すホルモンの分泌が確認されたにも関わらず、その後の超音波診断では胎嚢(たいのう)が確認できなかったケースのことを指します。
受精卵が子宮内に着床し、成長しようとしてくれたことは間違いないのですが、何らかの原因で妊娠を継続することができなかったと考えられます。
そして、全てが解明されているわけではありませんが、ここにも着床の窓が関わってる場合があります。
着床の窓の終わりかけの時期に胚移植が行われた場合に、化学流産が起こる可能性が高くなるということが分かっているのです。(*1)
*1 Díaz-Gimeno P, Ruiz-Alonso M, Sebastian-Leon P, Pellicer A, Valbuena D, Simón C. Window of implantation transcriptomic stratification reveals different endometrial subsignatures associated with live birth and biochemical pregnancy. Fertil Steril. 2017 Oct;108(4):703-710.e3. doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.07.007. Epub 2017 Aug 30. PMID: 28863933.
ERA検査後の妊娠の経過を継続的に調査したこの研究では、着床の窓の期間中であっても、検査・移植のタイミングが着床の窓の終わりに近い状態であった場合、実に半数が化学流産という結果となってしまっています。
この2017年に投稿された研究成果を元に、ERA検査では着床の窓タイミングであっても、検査タイミングよりも12時間前、または12時間後に移植を推奨するという解析アルゴリズムが開発されました。
着床率の向上だけでなく、化学流産の予防のためにも、12時間単位で移植時間の推奨ができるERA検査が役立ちます。ERA検査以外の着床の窓検査では、24時間のずれしか特定することができません。
世界初の着床の窓検査であり、数々の研究に裏付けされた、世界で最も精度の高い着床の窓検査、それがERA検査です。
PGT-A検査で正倍数性胚盤胞が得られた方
そもそも不妊の原因には胚側の要因と子宮内膜側の要因があります。
胚(受精卵)側に原因がある場合の主な問題は、胚の染色体数に異常があることがほとんどです。これは、PGT-A検査を行い細胞の染色体数を調べることで大幅に改善することができます。
そしてPGT-A検査で正常な染色体本数を持つ正倍数性胚盤胞が得られた場合には、併せてERA検査も検討することをおすすめします。
※正倍数性胚盤胞とは、染色体の異数性が認められなかった胚のことです。
正倍数性胚を移植することで、着床率を向上し、流産の確率を下げることができます。
残念ながら、女性の年齢が高くなるほど、染色体数に異常を持つ胚の割合が高くなることがわかっています。
そのため、年齢の高い方では特に正倍数性胚を得られることは貴重です。
せっかく得られた妊娠の可能性が高い正倍数性の胚を活かすためにも、ERA検査によって着床の窓を調べ、子宮内膜も万全な状態にして移植を行うことが重要です。
本邦において、PGT-A検査はまだ臨床研究としてのみ行われている段階ですが、近い将来には、より多くの患者様を対象として行われるようになると考えられています。
※2021年11月現在
子宮内腔に問題が見つからないにも関わらず、胚移植が成功しない方
胚移植を複数回行っても成功しない理由は様々ですが、その約20%は子宮内膜に要因があると言われています。
子宮鏡や超音波検査等の所見で問題が見つかっていないにも関わらず胚移植が上手くいかない場合には、着床の窓がずれている可能性も検討してみるといいでしょう。
また、ERA検査を行う際には、ERA検査と同じ検体から同時に検査を行うことができる、EMMA・ALICE検査を組み合わせることがおすすめです。
EMMA・ALICE検査は、最先端の遺伝子検査技術を応用した子宮内フローラの検査です。
これらの検査によって、子宮内に生息している細菌の量(*2) とその種類・割合を特定することが可能です。
*2 妊娠を助ける菌が十分量いるのか、あるいは妊娠を助ける菌の量が少なく、無菌に近い状態なのかの判別を行います。
子宮内細菌の割合は着床や妊娠率と大きく関わっており、妊娠を助ける善玉乳酸菌(ラクトバチルス)を増すことで、妊娠率が大幅に向上することが分かっています。
事実、ERA検査で調べた着床の窓に合わせて胚移植を行った方のうち、EMMA・ALICE検査で善玉乳酸菌(ラクトバチルス)の割合が子宮内フローラ全体の90%以上を占めていた女性は、妊娠率が70.6%まで向上しました。
対して、ラクトバチルスの割合が90%に満たなかった女性の妊娠率は 33.3%でした。(*3)
このことからも、ERA検査に加えてEMMA・ALICE検査で子宮内フローラを調べることは、胚移植および妊娠の可能性を高めるということがわかります。
妊娠率を向上するには、ラクトバチルスの増殖を阻害するさまざまな悪玉菌・日和見菌を治療した後、ラクトバチルスを増やすための加療を行います。そのための治療オプションを検討するために、EMMA・ALICE検査を使用します。
*3 Evidence that the endometrial microbiota has an effect on implantation success or failure. Moreno, Inmaculada et al. American Journal of Obstetrics & Gynecology, Volume 215, Issue 6, 684 – 703.
ERA検査を受けることで妊娠率は上がるのか
ERA検査を受けることで妊娠率があがることは、国際的な研究論文・施設の導入実績・多くの利用実績によって確認されています。
2020年に発表された最新の研究では、71.2%もの参加者がERA検査後1年以内に妊娠し、出産しました。
体外受精で良好胚を移植しても妊娠できない、または流産してしまうといった経験のある方は、掛かりつけの医師にERA検査を受けるかどうかご相談されてみてはいかがでしょうか。
ERA検査は意味がない?まとめ
こちらの記事では、ERA検査は意味がないとは本当なのかについて解説いたしました。
ERA検査は着床の窓を特定するための検査で、ERA検査の対象となる患者様であれば、ERA検査によって妊娠率が向上するという有用性が認められています。
ERA検査によって、一人でも多くの方が妊娠のチャンスを手に出来ますように。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。